ご参加、ご協力の皆さま、ありがとうございました。
原発事故による被害を人権侵害ととらえ、どうやって奪われた人権を取り戻していくのか、個別の具体的な課題に取り組む前に、福島の現実を総体として把握したいと考え、前半は基調講演とそれぞれの登壇者からの発言、後半はパネルディスカッションが行われました。
ここで話し合われた内容は、今後のひだんれんの活動にとって大変示唆に富むものとなりました。
(報告の内容は、ひだんれん幹事で当日のパネルディスカッションのコーディネーター、佐藤和良さんのブログ「風の便り」より抜粋させていただきます)
全体の録画はこちらです。UPLANの三輪祐児さんより
ひだんれん「いのち・暮らし・人権を考えるシンポジウム」
◆今井照さん(公益財団法人 地方自治総合研究所主任研究員)から「『政治・行政』の考え方と市民自治」と題して基調講演がありました。
自民党長期政権下での官僚主導の行政運営、小泉内閣に至る自民党内閣による「改革」などを経て、地域の政治・行政組織としての自治体の現状は、「地方分権」の名のもとに集権化・一元化が進み、国による自治体統制が強化されている実態を示しました。
その上で、市民が使いこなすための「そもそも自治体とは何か」として、土地の区分としての自治体(住所)、地域社会としての自治体(人と人との関係)、 地域の政治・行政組織としての自治体(ガバメント)であると定義し、
「生きる場としての地域・自治体」の再建をめざすとして、多様性を保障する自治体〜個別具体的な地域における市民自治の論理、政治・行政共同体としての自治体〜「地域自治組織」に押し込められることなく、縮小社会の到来のなかで、政治の当事者となる市民が政治争点の日常化、全般化を進めていくべきと述べました。
今井照さんの当日講演レジュメはこちらです。
◆憲法学者の中里見博さん(大阪電気通信大学工学部人間科学研究センター教授) 原発賠償京都訴訟の原告でもあります。
「差別と分断を乗り越えるためにと言いながら、立場が一方に偏っていて本の作り手が分断されたままで、どうやって読者に分断を乗り越えることが期待できるのか」と疑問を投げかけました。
また、科学の優越性が前提となっているが、低線量被曝の健康リスクなど社会的、政策的レベルでのリスク評価は「<科学的に不確実である>ことに関して、リスク評価は市民社会=主権者が行うべきだ」とし、「健康リスクにかかわる平穏生活権」(平穏のうちに生活する権利)が提唱されていることを説明しました。
中里見博さんの当日発言メモはこちらです。
◆医療の立場から崎山比早子さん(特定非営利活動法人 3・11甲状腺がん子ども基金代表理事)
被曝の健康リスクについて、「放射線ほど身体に与える影響がわかっているものはないのに、何故専門家の意見が分かれているか。専門家が市民にデータを公表していないから」と厳しく指摘しました。
また、福島県による県民健康調査の甲状腺検査に対する過剰診断論についても、福島県県立医大の「鈴木眞一教授は過剰診断ではない、と否定している」と説明しました。
時間が足りなく準備したすべての資料を説明していただくことができず残念でしたが、資料を添付しましたので、ご覧ください。
◆市民の立場から千葉由美さん(いわきの初期被曝を追及するママの会代表)
初期被曝をしてしまった子どもたちを守りたいと、追加被曝を防ぐ体制づくりをめざして、TEAMママベク子どもの環境守り隊をつくり、学校周辺の土壌など子どもの環境の放射能測定を継続し、子どもたちの被曝防護策を求めるため、行政との長期的な協議を行ってきたこと、を報告しました。
◆パネルディスカッション
4人のパネラーの皆さんとコーディネーターの佐藤和良さん
パネルディスカッションでは、「被害者としての責任を果たす」がキーワードの一つとして語られました。原発事故の収束も見通せない中、放射線被曝を軽視した帰還政策が強行されるなかで進む人権侵害に対して、被害の原点に立ち戻りながら、厳しい現状に甘んじることなく、分断を超えていくこと、被害者がつながることで、子どもたちや未来世代のために、奪われた人権を取り戻して行くことを確認しあいました。
共に考え、共に状況を変えていくために、今後のシンポジウムの継続開催の声も聞かれました。
◆ひだんれんは今年も各団体が手を携えて、被害者の命・暮らし・人権を取り戻すための活動を続けます。
どうぞ、よろしくご支援ください。
どうぞ、よろしくご支援ください。
ひだんれん 参加各団体の団長、代表の皆さん