福島県避難指示区域外から、山形県米沢市の雇用促進住宅に避難した8世帯に対し、住宅を監理する独立法人が立ち退きと家賃の支払いを求める訴訟が起こされています。
1月12日(金)山形地裁での「住宅明渡し訴訟第2回口頭弁論」の傍聴と報告集会に参加しました。
傍聴席27席に対し60名以上が並び、この裁判への関心の高さが示されました。
以下、報告集会での福田弁護士の解説の要約です。
◆今回は訴訟の枠組みの変化があった。
・「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」(以下、機構)が、昨年10月31日に雇用促進住宅の一括売却をし信託契約が締結されて、実質的な所有者は「東日本民間賃貸サービス合同会社」となり、ここが大阪にある「ファースト信託株式会社」に委託している。
・現在、受託者として住宅管理をしているファースト信託が裁判に参加してきた。実質的にはファースト信託が、原告として裁判を遂行していく。
・機構は裁判からは脱退し、残っているのは4月~9月末までの家賃を請求する部分だけとなる。
・原告代理人は機構とファースト信託の代理人となる。
◆今回の裁判手続きは
・ファースト信託が参加申立書を提出した。
・機構と被害者間のさまざまな法律関係について明らかにせよとした求釈明に対する回答した書面が原告から提出された。
・こちらからは準備書面1を提出した。内容は、住宅供与打ち切りは国際人権機関においても、問題があると指摘されている。裁判所としても公正な審議を求めるというもの。
◆本日のやり取りで明らかになったこと。
・原告が被害者に対して、訴訟を起こしてでも追い出しをしようという強い対応の割には、法律関係は杜撰な管理をしている。例えば、機構は被告と機構の間に使用貸借契約が成立しておりそれが3月末で打ち切られたと主張していたが、準備書面ではこれを根本から覆して貸し主は子会社であるSK協会であるとしている。
・更新については毎年更新していたとするが、そのような書類は作成されていない。
機構の言い分は、雇用促進住宅に1年間延長するという貼り紙をしていた。入居者はそのまま住み続けていたので黙示の契約が成立していたとしている。
去年3月で打ち切るという明確な書面を出すことはできないでいる。
また、貼り紙は機構の名前で出されていて、貸主だとされるSK協会の名前ではなかった。
・重要 福島県が機構から借り上げるという書類が作成されている。機構理事長と福島県知事の公印が押してあるものだ。そうであれば貸主は福島県ではないのか。それには一切触れずに、機構はSK協会が貸主だと主張していて、支離滅裂である。
・重要 機構という公的主体から、雇用促進住宅が民間主体に譲渡された。譲渡契約の中で公的な性格を民間に引き継がせるためにいろいろな約束をさせているはず。例えば雇用促進住宅の入居者については10年間は同じ契約にするなど、その証拠を機構は持っているはずだ。
これが重要なのは、譲渡契約の特約の中に災害救助法に基づく応急仮設住宅に関しては、譲渡の段階で入居者に有効に、譲り受け人がそのまま引き継ぐということが入っているはずだが、機構はそれを出してこなかった。
出すと譲渡契約に基づいて居住する権利があると主張することを恐れて出してこなかったのではないかと思い、今回はこれを提出するよう要求した。(2週間以内に書類が提出される予定である。)
海渡雄一弁護士
「住宅の公的性格を際立たせ、避難世帯への補助打ち切り政策が正しいものか、争点にしたい」
井戸謙一弁護士
「国も福島県も姿を隠し、“民民”間の問題にされようとしている。
原告はファースト信託株式会社。国でもなければ、福島県でもありません。雇用支援機構から住宅を購入した東日本賃貸サービス株式会社から住宅の信託を受けた会社です。
自主避難者の追い出しの責任ある国や福島県は表に出ないで隠れている。
原告は、避難者に住宅を貸していたのは雇用促進機構だったと主張しています。
しかし本日の期日(1月12日)で我々避難者側は、福島県が雇用促進機構から雇用促進住宅を一括して借り上げる旨の福島県知事と機構理事長の公印を押した確認書を証拠提出しました。
福島県が一括借り上げたのなら、避難者に供与したのは福島県であり、明け渡しの原告になるべきなのは福島県です。
責任ある者が裏に隠れるからくりをあばかなくてはなりません」
次回 第3回口頭弁論は3月20日午後2時から
山形地裁にて。
現裁判長は3月までで、4月から新しい裁判長となることが弁護団より報告されました。
2018年1月14日日曜日
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