2021年1月14日、内堀雅雄福島県知事に対し、原発事故被害者団体連絡会、「避難の権利」を求める全国避難者の会、避難の協同センターの3団体で抗議声明を発出しました。
【国家公務員宿舎入居避難者への立ち退き・2倍家賃請求 避難者親族に対する文書送付、直接訪問に抗議します】
昨年末、福島県は国家公務員宿舎に避難している34世帯の親族に対し、国家公務員宿舎からの退去と「2倍家賃」の支払いを促す書面を送り、県職員が親族宅を直接訪問しました。
当事者の証言によると、「国家公務員宿舎に入居されている御親族に関するご協力について(依頼)」という12月14日付生活拠点課長名の書面が送付され、その後数日にわたり県職員が直接親族宅を訪問。事情を知らない母親らに、「損害金が〇〇万円溜まっている」「自主的に転居しないなら裁判に訴えざるを得ない」「こんな立派な家もあるのに」「東京に住みたいなら仕事をやめて安いところを探したらいい」などと述べ、避難者に国家公務員宿舎からの退去と「2倍家賃」の支払いを説得するよう強く求めたそうです。
親族からの知らせを受けた避難当事者は大きなショックを受け、「家族の人間関係を壊すこのようなことをする権限はどこにあるのか」、「パートの給料で日々生活をするのが精いっぱいの今、仕事を手放し引っ越し先を探せと言うのか。『死ね』と言われているように思えてしまう」など、悲痛な声がきこえてきています。
内堀知事は、「被害は複雑化している。一人ひとりの実情に寄り添って生活再建に努める」と表明をされています。
しかし、今回の福島県職員の行為、言動は、知事の言明された生活再建支援とはかけ離れたものではないでしょうか。
十年前に始まった東京電力福島第一原発事故の影響により、住まいも仕事も捨てざるを得ず避難した人々のうち、さまざまな理由で住宅支援打ち切り後に移動することもままならない人々に対して、損害金を請求し、家族関係を壊してでも立ち退きを求めるこのようなやり方は、人権と尊厳を傷つける行為であると言わざるを得ません。
さらに、Covid-19感染の拡大が、生活困窮、健康不安などを深刻化し、特に社会的に弱い立場の方々に深刻な打撃を与えている中で、上述のように避難者を追い詰める行為を福島県が行っていることは、人道上許されない行為です。
私たちは、早急に詳細な事実関係を調査し、書面の撤回、当事者への陳謝を行うよう求めます。
また、現在も続いている福島原発事故は、多くの県民に多大な影響を与えており、コミュニティの再建、生活の再建に困難を抱えている県民に対し、昨今のCovid-19感染拡大による打撃はより深刻なものとなり得ます。
避難者を含め脆弱性を抱えた県民の広範な生活実態を把握し、必要な緊急支援を実施することを、切に要求します。
原発事故被害者団体連絡会
「避難の権利」を求める全国避難者の会
避難の協同センター