12 月 17 日に出された原発避難賠償訴訟に対する山形地裁(貝原信之裁判長)の判決は、「国は 10m以上の津波の到来を予見できたが、対策を講じたとしても事故を防げなかった可能性が有る」として、国の責任を否定した。東京電力の原子力損害賠償法上の責任は認めたものの、「支払われるべき慰謝料はすでに弁済している」とし、賠償の上積みは認めなかった。734 原告のうち、たった5人に認めた
44 万円は請求漏れとのことで、実質賠償額はゼロだ。これまでに出された損害賠償訴訟 13 件の判決の中でも、このように不当な判決は今回が初めてである。
原告の多くは、「より安全な場所」として福島に近い山形を選び避難した。この人たちには何の落ち度もなく、見えない放射能の危険から身を守るために苦渋の選択をし、9 年にも及ぶ避難生活を余儀なくされているのである。
ふるさとでの平穏な生活だけでなく、人生設計も家族や友人・知人との人間関係も、生業も将来への夢も希望も破壊され、見通しの立たない喪失感のただ中にある被害者の実態に、真摯に向き合ったとは到底言えない。ひとたび事故を起こせば取り返しのつかない被害をもたらす原発の危険性を軽視し、加害者の一存による賠償を引き写しただけの判決は、事実に基づき社会正義と法にのみ従って判断すべき司法の良心と役割を放棄したものと言わざるを得ない。
当原発事故被害者団体連絡会、加入団体「被災者フォーラム山形・福島」の代表であり、「米沢住宅追出し訴訟」で避難者でありながら被告となった武田徹さんらは、同じ山形地裁の貝原裁判長が第 10 回口頭弁論で証人申請をすべて却下したため、忌避を申し立てたが却下された(仙台高裁に即時抗告)。その武田さんは、判決についてこう語っている。
「紛争を解決する最期の拠り所である裁判での、血も涙もない判決を聞いて、いつからこの国は、思いやりのない、弱者が生きにくい社会になってしまったのだろうと思う。ふるさとを離れ、知らない地で必死に生きてきた母子、通勤に疲労困憊している父親、知らない地でいじめにあって苦しんだ子、病と闘っている人、意見の相違から夫婦が別れてしまった人たちなどの顔、顔が、次から次へと目に浮かぶ。本来、弱者の味方であるはずの裁判官に対し、その非情さに憤りを感じる」区域外避難者の住宅問題など、原発被害者の人権保障と回復に取り組んでいる原発事故被害者団体連絡会としては、山形地裁のこの判決は到底納得できるものではない。原発の危険性と原発事故の被害を過小に評価し、国の責任を認めなかったこの判決に強く抗議する。
2019 年 12 月 20日
原発事故被害者団体連絡会
福島県田村市船引町芦沢字小倉140-1
連絡先:☎080-2805-9004
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