2018年11月27日の午後、県内外からの避難者、被害者、支援者、合わせて50人が福島市市民会館に集結し、原発事故被害者の人権保障を求めて、あきらめず共同して闘うことを確認しました。
<登壇者>山田俊子さん(ひだんれん幹事 福島原発かながわ訴訟原告団副団長)/大賀あや子さん(「避難の権利」を求める全国避難者の会)/ 村田弘さん(ひだんれん幹事・福島原発かながわ訴訟原告団団長)/佐藤直樹さん(新潟避難者)/今野秀則さん(津島訴訟原告団団長)/菅野清一さん(ひだんれん幹事 山木屋原告団団長)/武田徹さん(ひだんれん幹事 米沢住宅追出し訴訟被告代表)/佐藤八郎さん(福島生活と健康を守る会連合会)/瀬戸大作さん(避難の協同センター事務局長)/宇都宮健児さん(反貧困ネットワーク代表世話人・弁護士)/熊本美彌子さん(ひだんれん幹事 原発避難者住宅裁判を準備する会代表)/今野寿美雄さん(ひだんれん幹事 子ども脱被ばく裁判原告団団長)/武藤類子さん(ひだんれん共同代表 福島原発告訴団団長)
<当事者から>
■ひだんれん幹事・福島原発かながわ訴訟原告団団長 村田弘さん
| この集会のきっかけは、帰れないと国が認めている帰還困難区域の仮設住宅すら、2020年で打ち切ると発表した8月27日の内堀福島県知事の記者会見だった。早めにお尻を決めた方が、自立への覚悟が早くできるだろうという発言を聞き、怒りのやり場がなくなった。ひだんれんとして9月28日に抗議声明を突きつけ、10月24日に共同アピールを呼びかけた。 被害県として被害者を守る立場にあるはずの福島県知事が、2020年のオリンピックには被害者も被害もなくなったとアピールしたい安倍政権の政治的スケジュールに沿って、二人羽織の人形のように国の手先になって、住宅も支援策も打ち切ってきた。これには我慢ならん!まだ7万人の人たちが故郷に帰れない。福島県を「原発避難者をひとりも路頭に迷わせない」というところにたち戻させるため、この集会を設定した。力を合わせてこの非情な政策を変えていこう!
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■「避難の権利」を求める全国避難者の会 大賀あや子さん
| 政府の避難指示の有無にかかわらず、避難した人、帰還した人も含めて個人の会員で、2015年秋から活動している。北海道から九州まで仲間がいて、細々と活動を続けている。
きびしい状況だがあきらめずに被害の大きさを明らかにして、被害者の救済につなげたい。
設立趣意書より「汚染地に居住する者は、避難するかまたは留まるかの自己決定を保障されるべきであり、それは決して被曝か貧困かの選択を強いるものであってはならない。「被曝なき居住」「貧困なき避難」は、私たちの生きる権利であり基本的な人権である。これから私たちは、自らの権利として実質的な保障の獲得を目指していく。そのためにはまず、避難当事者による運動が不可欠であると自覚して、私たちはこの会の活動をスタートする。」
「避難の権利」を求める全国避難者の会 http://hinannokenri.com/
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■新潟避難者 佐藤直樹さん
| 妻子が新潟に母子避難している。新潟県は福島県とは別に1万円の家賃補助をしているが、福島県が民間賃貸住宅の家賃補助を打ち切ったらなくなると思う。避難した仲間も介護や経済的な理由で帰還している。おじいちゃん(父)は一人暮らしだが子ども(孫)は18歳までは新潟にいろと言ってくれる。午前中の福島県交渉に参加したが、県の職員は子供の遣いのような対応だった。普通の会社ならあり得ない。責任者(知事)を出せ!という話だ。避難の継続、帰還、移住の自由選択を可能にし、意思決定に市民が参画できるようにしていきたい。
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■津島訴訟原告団団長 今野秀則さん
| 浪江町津島は帰還困難区域で、原告団を作り裁判を闘っている。450世帯1400人が住んでいた。いつになったら故郷に帰れるのかわからないまま8年目を迎えた。ふるさとという言葉を聞くととても堪えられなくて、涙してしまう。ふるさとは多義的意味がある。環境、自然、歴史、文化、地域社会を作って交流してきた。それら一切を奪われて放浪の旅を強いられている。まさか避難を強いられている住民の住宅を取り上げることはないだろうと思っていたが、打ち切りという仕打ちをされるとは思わなかった。我々は団結して福島県、国に対して主張して認めさせるべきだ。我々の裁判はまだ途中だが、来年からは原告本人尋問や専門家証人尋問が開始される。皆さんの力を借りながら頑張っていきたい。
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■山木屋原告団団長・川俣町町議会議員 菅野清一さん
| 津島は帰れない地区、山木屋は帰れと言われている地区。340世帯1256人が避難させられた。今、戻ったのは326人、50歳以上が80%の、高齢者の元気な村になった。1年半前に解除され、国道114号線も無理やり開通させて、小中一貫校に13億5千万円かけて15人の子供が通っている。小6,5人、中2,3人、中3,7人。このうち小5・6は卒業したら山木屋中には入らないと言っている。中3が卒業したら3人しか残らない。町は他の小学校から不登校の子どもを無理やり連れて来ようとして、議会は大荒れだ。 大人は何をしているのかといえば、山木屋だけで150億円もの復興予算が入り、今まで見たことのない動物、見たことのない植物、見たことのない機械を入れて復興事業をしているのを、こたつに入って見ているだけ。山木屋の産業はほとんど廃業になった。60社あるうち戻ったのは5社だけ。 12市町村合わせて9万7千300人いたが、帰還したのは1万5千人、8万人はまだ避難したままだ。 川俣町議会で避難地区からの議員は私一人だが、区域外避難者の住宅補助を継続するよう、連続3回意見書を出している。川俣町議会は機能していると自負している。ほとんどの首長は、国の方を向いている。特に経産省を見て仕事をしている。議会がしっかりしなければだめだ。そこが一番訴えたいところ。ほとんどの市町村はものを言わない。議会の体たらくだ。憲法93条では自治体に議事機関として議会を置くと書いてある。市町村長を置くとは書いてない。民主主義の根本が問われている。 裁判は4年目となるが時間との闘い、原告が次々とあの世に行っている。これだけひどい被害を出していても、誰も責任を取っていない。敵は強大だ、地方自治体までグルになっている。そういう中で、決してあきらめず仲間を作り、世論に訴えて闘い抜かないといけない。手を取り合って頑張っていきたい。
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■米沢住宅追出し訴訟被告・被災者フォーラム山形・福島代表 武田徹さん
| 来年78歳になる。この歳で避難生活を強いられる、狂った県、狂った国だ。午前中は県との交渉に参加したが、県は必要な支援はすると言っているが、答えは全部逆にとればぴったりだ。最近のニュースでは、台湾は福島県のものは禁輸入としているのに対して、内堀知事は台湾政府に「福島に来て現状を見てほしい」と言っているが、福島県からの避難者の実態は見ようとしない。また、福島のサルに異常が出ていると言われている。避難しているお母さんたちは、帰れない理由を福島県にぶつけなければならない。
米沢ではわずか8世帯が家賃の支払いを拒否して、18か月間堂々と生活している。 不服従、非暴力で、日本国憲法や、ありとあらゆるものを動員して闘う。被害者が訴えられるなんて、こんなバカなことがありますか?山形の人たちにお世話になって頑張っている。
是非、後に続いてほしい。
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<連帯あいさつ>
■福島県生活と健康を守る会連合会長・飯舘村村議会議員 佐藤八郎さん
| 生健会(生活と健康を守る会)は全国組織で、福島県は1000世帯、会員数3千~4千名でいろいろな活動をしている。明日あさっては、ちょうど毎年の中央行動の日で、福島生健会は、原発反対、要求の分野を任せられていて、自主避難者の住宅提供の継続などの要求を掲げて行動している。飯舘、南相馬、川俣、伊達にも仲間がいて一緒に活動している。 日頃から裁判や集会に参加して、真実と実態を知らせる活動を通じて、連帯して闘いたい。
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<支援者から>
■避難の協同センター事務局長 瀬戸大作さん
郡山から神奈川に母子避難していた女性が昨年5月に自死した。二人の子どもを連れて避難し、住宅無償提供の打ち切りが発表されたが、二人の子どもを大学に入れたくて、ダブルワークをしていて精神的に追い詰められた。彼女の思いをしっかり引き継ぎたい。
支援の打ち切りの根拠と問題点
- 福島県自らが避難者の支援を終了してきている。形式上は福島の決定を政府が追認する構造。
- 子ども・被災者支援法については国会で審議し全会一致で決定したが、支援の打ち切りについては国会も県議会も、議会の審議がないまま決定している。
- 国家公務員住宅について、財務省は県からの要請があれば居住延長も含めて対応すると言っているが、福島県は居住延長の要請をするつもりはないと言っている。終了の理由は、公平性。福島県では普通に人々が暮らしている。県民感情を踏まえたときに、区域外避難者だけを支援するわけにはいかないと、公平性を何回も強調している。それと、原発事故から7年も過ぎたのだからそろそろ自立してくださいと、期限を決めた自立強制をしている。また、未だに避難者の実態調査を行っていない。生活実態や意向調査を一切実施することなく支援を打ち切る。帰還困難区域の打ち切りも同様、すべて先に期限を決めてしまう。ここをしっかり押さえて取り組みたい。
本日の県交渉について
- 国連の人権理事会の勧告についてどう考えるかという質問に対して、「様々な声はあることは受け止めた」と、国連の勧告を「様々な声」として一蹴した。
- 帰還困難区域の仮設住宅打ち切りについて、先に期限を決めてその後11月から意向調査をするとしている。すべて順番が逆転している。住民の意向を聞くことなしに、先に支援の打ち切りを宣言する。そこを突っ込んで話をした方がよい。
- 民間賃貸住宅家賃補助対象の収入21万4千円以下の世帯に対して、実態調査を要求したが、福島県は実態調査をせず「戸別訪問や相談業務に基づいて個別対応をする」と答えている。今まで何件戸別訪問をしたのかという問いに答えられない。民賃補助対象世帯の大多数が、現状でも経済的に厳しいと言っているが、未だに訪問も調査もしていない。
- 福島県は全国26か所の相談支援拠点で避難者対応をしていると言っているが、相談事業は話を聴くことしかできない。今の福祉制度では経済的支援は一切ない。お金に困っているときに、相談を聴くだけではどうにもならない。事例として、避難者であるお母さんが派遣会社の首切りに遭い、精神的に病んでいて仕事ができない。役所に相談に行ったが、社会福祉協議会の貸し付け金も受けられない。ここで支援が終わってしまう。そのお母さんは、原発事故がなければこんなことにはならなかったと言っていた。だから実態把握をしてほしいと言っているのだ。相談支援拠点の人たちはこのような実態は知っている。
- 一番問題なのは単身避難者だ。公営住宅に入る資格がない。65歳以上なら何らかの対応ができるが、65歳未満はどこにも行き場がない。
- 母子世帯は年収で150万円程度、家賃支援が切れたとき都市部で8万、9万の家賃でどうやって暮らすのか。
- 国家公務員住宅の入居者で、来年4月以降の住まいが決まっている人は2割だけとのこと。8割は決まっていないか、わからない。その人たちに対して来年3月いっぱいで出ていけ、出ていかなければ2倍の家賃を請求すると言っている。このことに対してもっと怒るべきだ。
住まいは人権
ある男性は、一人で避難しているんだから退去してくださいと言われ、追い込まれて出るしかなくて一年間路上生活をしていた。現在の福島県の支援打ち切りの状態を放置すると、同じような人がまた出るのではないかと危惧する。
住まいは人権だ。家は無条件で提供するのが本来のあり方だ。日本には原発事故で避難した人にさえ、ハウジングファーストという考えがない。
今日の集会までに678人の賛同があったが、12月7日の復興大臣への申し入れには、1000名にしたいので、皆さんご協力を!
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<共同アピール>
■ひだんれん幹事・原発避難者住宅裁判を準備する会代表 熊本美彌子さん
| 「私たちのことを私たち抜きに決めないで」と、私もこの場で話そうと思っていた。
このスローガンは人権を守り、民主主義を守るうえでの基本だが、私たち原発事故被害者にとって、それが今ここにあるのか?!すべてが私たち抜きに決められている。
当事者が声を上げるために、共同アピールを読み上げます。
★共同アピール
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<閉会あいさつ>
■ひだんれん共同代表 武藤類子さん
| 閉会のあいさつに代えて、原発賠償京都訴訟 原告団共同代表 福島敦子さんから集会メッセージが届いていますので、読み上げます。
「どれだけ言葉を尽くし、どれだけ膝を付き合わせて話したら、国と福島県はこの福島第一原子力発電所の爆発事故で生じた放射能漏れの被害の実態に向き合うのでしょうか。私たち福島県内在住者も避難した県民も、事故以来の収束しない放射能漏れへの不安と広がる健康被害、そして命の基盤でもある避難者用住宅を強制的に退去させられていく虚無感に未来を描けずにいます。国と福島県には県民一人一人に真摯に向き合い、健全な『復興』を目指してほしいと切望しています。そしてここに、私たちが共闘し共に進む大きな意義を見出しています。」
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<特別講演>
■反貧困ネットワーク代表世話人 弁護士 宇都宮健児さん
「原発避難者の住宅問題と人権保障について」
福島とのかかわり
2010年4月から2012年4月まで日本弁護士連合会の会長をしていた時に、東日本大震災と原発事故があった。直後に岩手、宮城、福島に入った。福島の弁護士会で大きな余震があった時、地元の弁護士が「原発は大丈夫か」と叫んだのを覚えている。当時の事務総長が海渡雄一弁護士だったので、的確な意見や方針を発表することができた。2012年と2014年の都知事選に立候補したときは、当時浪江町長の馬場有さんが、応援演説でマイクを握ってくれた。立派な政治家だった。改めて哀悼の意を表する。
避難者の住宅支援打ち切り問題
1.住宅問題は自主避難者の問題だけではない。
- 帰還困難区域、避難指示解除区域の問題になっている。原発事故は終わっていない。このことを当事者が中心になって訴えていくことが大事だ。
- 2020年の東京オリンピックにはすべての住宅補償を打ち切り、県も政府も被害はなくなった、避難者はいなくなったとしたい。まだ原発事故は終わっていないことを当事者が声を上げ、メディアもそれを伝える必要がある。加害者である東電、国はとことん補償する責任がある。
- 憲法13条や25条で、人間の尊厳が守られ、人間らしい暮らしをする権利がある。国はそれを保障する義務がある。これを放棄しているのが安倍政権だ。国の体をなしていない。国とは言えない。
- 地方自治体法では、住民の暮らしや生命を守るのが、地方自治体としての最大の責任である。地域住民の命や暮らしをとことん守り、それを果たさない国には断固として抗議するのが自治体の長の役割で、国に追随しているのは責任を果たしていない。内堀知事には沖縄県知事のデニーさんの爪の垢を煎じて飲まさなければならない。
2.「子ども・被災者支援法」のにおける国の役割
- 日弁連は「子ども・被災者支援法」の成立に大きく関与している。当時、モデルにしたのは「国内強制移動に関する指導原則」で、参考にした。避難するかしないか、地元に留まるか、自己決定権が避難者にある。避難する人、留まった人を差別してはならない。同様に生活の支援や住居の支援を、国の責任を持って行うというのが支援法である。立法においては全会一致で成立したが、中身に関して履行していない。責任を果たしていないのが現政権だ。
- 同じような規定は、国連の国際人権規約や社会権規約に食料や衣類、住居に関する規定が明確になっている。
- 国連人権理事会における有害物質の管理・処分などを担当するトウンジャク特別報告者の声明は、国際基準では1ミリシーベルト以下になっていないところに帰還させるべきではない、20ミリシーベルトを切ったから帰還させるのは問題だという、日本政府への要請である。1ミリ以下になっていないのにも関わらず、避難者への住宅の打ち切りは、帰還への圧力だ、やめるべきだと言っている。日本政府は日本の実情がわかっていないと、国際的な要請をネグレクトしている。内堀知事も同じだ。
貧困問題について
- 貧困と格差が広がっている/厚労省が発表したものによると、日本の貧困率は15.6%で6人に1人、子どもの貧困率は7人に1人、一人親世帯50.8%で2世帯に1世帯。貧困率とは、国民の所得の高い人から並べて真ん中の収入の人の年収の1/2未満の人の割合をいう。収入から社会保険料、税金を引いた、年の可処分所得の中央値の1/2が貧困ラインになるが、2015年の貧困ラインは可処分所得が122万円、月にして10万円で、これに満たない収入しかない人が6人に1人いるということ。東京では借家で家賃を払ってでは困窮に陥る。貧困の背景として、日本はもともと社会保障が脆弱なことと、1990年頃から非正規労働者が増え、今は労働者全体の4割、2000万を超える人達が非正規労働者として働き、年収200万円以下の低賃金労働者が11年連続で1千万人を超えるようになっている。低賃金労働者の更に下に、外国人労働者がいる。実習生は日本の最低賃金法を無視して、時給2~300円で働かされている。低賃金労働者の権利を保障しないまま、外国人労働者を招き入れようとしている。今、国会で議論されているこの問題は、外国人労働者の人権を尊重しないと同時に、日本の労働者の賃上げの重しとなってしまう。企業にとっては都合の良い政策だ。貧困や格差が広がれば社会保障を充実させる必要があるが、安倍政権は度重なる生活保護費の引き下げをはじめとして、医療、年金、介護の社会保障費全般を削減してきている。貧困に陥った人が使える制度は生活保護制度しかない。10年ほど前のリーマンショックで派遣切りがあり、路上生活を余儀なくされた人々がいる。年越し派遣村を作って、その人たちの集団的な生活保護申請をして、300人以上が生活再建を果たした。その生活保護が安倍政権では袋叩きに合っている。2013年から3年かけて生活扶助基準が670億円削減され、2015年は住宅扶助基準や冬季加算手当され、今年の10月から3年かけて160億円の削減が計画されている。避難者の住宅問題と同じく、本来なら生活保護利用者の生活実態調査や当事者の声を聴いて判断すべき。今の国会は全くこれをやっていない。国会議員は生活保護利用者の実態を知らないまま、財政難だからとバッサリやっている。
- 「私たちの問題を私たち抜きに決めないで!」/障害者運動で有名なスローガンに「私たちの問題を私たち抜きに決めないで!」というものがあるが、これはどんな問題でも同じだ。国会で生活保護利用当事者の声を聴くべきだが、全くやらないので、この問題に取り組む弁護士や司法書士が緊急ホットラインをやった結果、多くの利用者が「食事を削っている」「入浴回数が月1回」「交際費が捻出できないので外出しない」「耐久消費財が買えない」「古い服を着続けている」など、悲鳴にも似た切実な声が寄せられたので、厚労省に提出した。憲法25条は健康で文化的な最低限度の生活を保障している。日本は世界第3位の経済大国になっている。今はアメリカからどんどん武器を買っている。今度はイージスアショアを秋田と山口に配備しようとしている。2基で4600億円かかる。朝鮮半島は文政権になってから、平和の方向に情勢が変化してきている。イージスアショアをやめれば、生活保護の引き下げをしなくとも済む。生活保護を突破口に、医療、年金、介護をどんどん削減して、防衛予算だけは6年連続で増やしている。この状況に対して、生活保護利用者210万人に呼び掛けて、これに反撃する運動や裁判闘争をやっている。現在29の裁判所で1000人を超える人達が、生活保護費引き下げは憲法違反だとして引き下げを撤回しろと闘っている。貧困や格差をなくすことは、避難者問題と直結するものではないかもしれないが、普通に働けば人間らしい暮らしができ、病気やけがをしても人間的な暮らしができる、人間らしい生活が保障される社会にすることは、原発事故避難者の生活再建にもつながることだ。
- 住宅における日本の特殊性
住宅についても日本は特殊なところがあり、まず、公共住宅が極端に少ない国だ。なぜかというと、公共住宅が増えると民間住宅会社に影響が出て迷惑をかけるからと、数十年前から公共住宅の建設がストップしている。東京都は新しい都営住宅は20年間一戸も作っていない。諸外国から比べると、公共住宅の割合がすごく少ない。公共住宅を増やすと民間会社が儲からないから。諸外国には当たり前にある家賃補助制度もない。
困当事者は経済的、社会的、人間的に孤立している人が多く、賃貸住宅を借りる場合の保証人がいないため悪徳業者に引っかかることがある。諸外国では自治体や公的な団体が保証人になる制度が完備している。なぜかというと、住宅は基本的な人権だという位置づけがなされているから。住宅があって初めて人間らしい暮らしができ、仕事もできる。住居がないということは生活もできないし仕事もできない。避難者の住宅問題と貧困問題を解決するための住宅政策は共通している面がある。
当事者運動の重要性
今日、困難な生活状況を抱えながら、「避難の権利」を求める全国避難者の会とひだんれんが共同で、県交渉と緊急集会を持たれたことに敬意を表します。
全国に散らばっている避難者の方々それぞれの家庭もあり、毎日の仕事もあり、子どもの教育もあり大変でしょうが、あなた方がいないと今の状況は誰にもわからないし、誰も伝える人がいない。ネットワークを作り、声をあげていることに改めて敬意を表します。
- クレサラ運動の経験から
私は弁護士になって40年間、サラ金クレジットで多額の借金を抱えた多重債務者の支援活動をしてきた。単に支援活動だけではなく、多重債務者を生み出さない、高利貸しのない社会を作らなければいけないと、被害者団体と一緒になって、貸金業法という法律を変えて、金利を下げる、過酷な取り立てをやめさせる、過剰融資をやめさせるという立法運動をした。この運動の中で大きな力を発揮したのが、多重債務当事者の運動だった。昔は多重債務者に対しては、借主責任論が横行していた。高利はわかっていて借りたのだろう、どうせギャンブルに使ったのだろうと。借主責任論を転換していったのは当事者の声だった。私たちは多重債務者組織を作って声を出すのを支援していった。今も昔も借金しているということは恥ずかしくて言えない。みんなに迷惑をかけているから、職場、家庭、親戚から批判されていた。当事者が集まって励ましあい、生活再建を支えあった。自分は悪かったとしても、夜討ち朝駆けや、腎臓を売って借金を返せとか、年100%も金利を払わなければならないのかと、声を上げだして、サラ金運動が広がった時は、47都道府県に80団体以上の多重債務者の会ができて、やっとマスコミが取り上げるようになった
2006年に画期的な法改正ができた。4700社あったサラ金業者は2000社に減り、テレビコマーシャルも減った。その時、被害者運動と我々の運動が一緒になって、47都道府県1360の地方自治体で、金利を下げろという決議を上げさせた。当時、衆参合わせて720名の国会議員全員に当たって、最終的には自公の多数派が金利引き下げになった。その当時は第一次安倍政権だった。安倍政権の元でも運動が盛り上がればそこまで追い込める。当事者が声を上げるということは大切なことだ。避難者は47都道府県すべてにいると思う。一人でも多くの人が声をあげるネットワークづくりをしていただければ、反貧困ネットワークも応援したい。
韓国の市民運動やソウル市の実践に学ぶ
- お隣の韓国では2016年から2017年にかけて、パク・クネ政権の政治の私物化があり、市民の怒りが爆発した。20回の集会の中、1650万人の人が参加した。(国民の3人に1人)リベラル系39%、中道19.4%、保守系17.3%と、自民党を支持している人が「アベ辞めろ」といったと同じで、それだけ運動が広がった。この運動で政権が交代し南北融和につながった。それを支えたのがソウル市の改革で、2011年から市長になっているパク・ウォンスンさんは、すべての小中学校の給食を無償化した。ソウル市立大学の授業料は半額に、市で働く非正規労働者8000人を正規化した。賃貸住宅を8万戸建設して、家賃が払えない人の支援体制を作った。市内で二人の母子が生活苦で自殺した。それから福祉担当者を3倍に増やし、各行政区6人~7人の福祉担当者が看護師と共に生活困窮地帯に出かけて行って、申請に来るのを待っているのではなく、出前福祉(チャットン)で、生活困窮者を生活保護に結び付けている。この結果、生活保護の捕捉率(生活保護受給の権利のある人で、利用している人の割合)は2割から6割になった。日本は捕捉率が2割のままで210万人、あと800万人の人が利用する権利があるが、権利があることを知らないか、偏見やバッシングで利用していないかだ。
- 政治が変わることで市民生活が大きく変わってきている。そういう運動を支える強力な市民運動がある。ソウル市長のパク・ウォンスンは「参与連帯」という市民運動の創設者だが、「参与連帯」はソウル市内に5階建ての自前のビルを持ち、60人の専従活動家がいる。それらを通じて全国ネットワークがあり、政治への影響力がある。日本にはまだそのような運動体がないが、韓国に学びながら、是非この運動を一回りも二回りも大きくして、次の県知事選では、内堀を打倒しましょう!政権に関しては安倍政権だけではなく、自民党支配を終わらせないと駄目だと思う。そういう運動につながっていくよう発展させていただきたい。共に頑張っていきましょう!
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